第1章 *テニプリ*仁王雅治*
部活終了の鐘が鳴る。
気付けば辺りは夕陽で赤く染まり校内の人の気配もなくなりつつあった。
せっかく完成した絵を提出しようと思っていたのに自分としたことがぼうっとテニスコートを眺めていたせいでこんな時間になってしまった。
急いで後片付けを済ませて職員室へと向かう。
電気のついた職員室にはまだ数人の先生達の姿があった。
そっと中を覗くと斎藤先生の姿を見つけることができた。だが他の生徒と話し中らしく私は暫く職員室の外で待つことにした。
「失礼しました」
と1人の生徒が出てきて、かわるように私が中に入ろうとすると今でてきた生徒とばっちりと目が合った。
「幸村先輩!?」
部活で見てたジャージ姿とは違う、制服を着た先輩は私に気付いて少し驚いた表情をしていた。
「君はさっきの…ああ、斎藤先生に用かな?ごめんね待たせてしまってたみたいで」
私は頭を振り持っていた絵をぎゅっと握りしめる。
「そうだ、この後少し話いいかな?」
思わず「え?」と、とんでもない裏返った声が出た。
「話ですか!?…大丈夫です、けど」
落ち着け。落ち着け私。
そう自分に言い聞かせながら小さく呼吸を繰り返す。
「俺、校門のところで待ってるよ」
ニコッと笑い先輩は先にいってしまった。
緊張しているのか自分の体が震えているのがわかる。おまけに心臓は先程から動悸が激しい。
私は一つ大きな深呼吸をしてから職員室へ入った。
10分ほど話した後、絵の提出を終えて職員室を出ると、急いで校門まで向かう。
先輩を待たせているという罪悪感で急ぐ気持ちはあるのだが体は思うように動かない。
先輩が私に話ってなんだろう。先程の仁王先輩のことだろうか。
ずっと私だけが一方的に知ってた先輩。
その部活姿をずっと見ていた私。
…まぁ、実はそれは仁王先輩だったわけだが。
考えるだけでさっきから緊張で体の震えが止まらない。どうしてこんなに意識しているのだろう。
もしかして本当に…
いつの間にか私は幸村先輩を好きになってしまったのだろうか。