第1章 *テニプリ*仁王雅治*
「幸村先輩」
校門に寄りかかり本を読んでいた先輩に声をかけた。
「ごめんなさい遅くなってしまって…」
先輩は「大丈夫だよ」と笑う。
「君、家はどっち?」
ふいにそう聞かれ、「向こうの方です」と指をさす。
「一緒だね、よかった。じゃあ歩きながら話そうか」と言い私たちはゆっくりと歩き始めた。
まさか一緒に帰ることになるとは思っていなかった。
もう外は薄暗く、生徒たちの姿もまばらであったことが唯一の救いだろうか。
何故かと言うと…
幸村先輩はとてもモテるらしいから。
私なんかが一緒に歩いてて勘違いでもされたら大変なことになりそうだ。
横を歩く先輩はもちろんだけど私なんかより背が高くてすらっとしてて、優しそうな雰囲気を醸し出してるしモテるのも頷ける。
「そういえば、まだ名前を聞いてなかったね」
「あ!私は1年のです」
「ちゃんか、よろしくね。俺は3年の幸村精市」
思わず「知ってます」と小声で呟いてしまう。
先輩がふふっと笑う。
「今日は仁王のことでちゃんと謝りたくてさ。さっきは急いでたから俺もちゃんと謝れなくて」
「いや!先輩が謝ることなんてないです。確かに最初はびっくりしましたけど」
そりゃ幸村先輩が2人も登場すれば驚きもする。
「ううん。うちのテニス部員がやらかしたことだから。とは言っても…仁王の奴どうしたんだろうね」
先輩はうーんと真面目な顔で考えている。
「確かにイタズラ好きの面はあるし、俺たちでさえなかなか掴めない性格してるんだけどさ」
仁王先輩はイタズラ好き。なるほど。
たいして話もしてないが妙に納得してしまった。
「けどあいつはあいつで実は真面目な奴なんだよ。何も考えなしにこんなことするとは思えないんだよなぁ」
では何の為にあんなことをしたのだろう。
今まで会ったことも話したこともない私に何故いきなりあんなことをしてきたのか。
そう考えていた矢先、ふと仁王先輩の言葉を思い出した。
"熱い視線を感じたんでのぅ"
確かに私は今日初めて仁王先輩に会った。
けど仁王先輩は、前から私の視線に気付いていた可能性がある。
いたずら好きということは、私の視線に気付いて、ちょっと幸村ファンをからかってやろうと思ってあんなことをしたのかもしれない。