第1章 *テニプリ*仁王雅治*
言いかけた瞬間
「…幸村のことは、どう思っちょる?」
と、突然聞かれた。
ここで幸村先輩の名前が出たことに驚きつつも、先ほどの仁王先輩の態度を思い出し全て納得がいった。
仁王先輩は、心配だったんだと。
私があやふやな気持ちのまま幸村先輩が好きだと仁王先輩に伝えていたせいだ。
確かに恋愛感情がまったくなかったといえば嘘になる。
「幸村先輩のことは…たぶん…好きというか、最初はとても絵になるなぁと思って見ていただけだったし…」
チラッと仁王先輩を見るといつになく真剣な眼差しで見つめてくる。
「…テニス部の部長さんって聞いてからは、尊敬の方が強かったかもしれないです。ただ、単純にすごいなぁって」
今はもう、そんなこと考えてる余裕ないくらい…仁王先輩のことでいっぱいなんですけどね。
先輩は「そうか」と一言だけ返してきた。
怒ってるのかと顔を伺うが、いつもの表情に戻っていたので少しホッとして胸をなでおろした。
「…先輩も…ヤキモチとかやくんですか?」
横顔にそう問いかけると「どうじゃろな」と答えたあとに
「相手次第じゃな。幸村相手じゃあさすがの俺も少しは焦るかもな」と、苦笑してみせた。
「さすが…部長さん、ですね」
「ああ、あいつはすごい。なんせ神の子じゃからな」
神の子やらペテン師やら、立海テニス部は色んな人がいるんだなぁ…と首を傾げながら聞いていた。