第1章 *テニプリ*仁王雅治*
信号はいつのまにか青に変わっていて点滅を繰り返していた。
私たちは再び手を繋ぐと足早にかけていく。
「先輩はもう少し素直になってもいいんですよ?」
「まるで俺がひねくれ者みたいな言い方だのぅ」
ひねくれ者。確かにそうかもしれないと思いつつもその言葉は心にしまっておいた。
「ペテンができなくなったら俺のテニスは終わりじゃき。こればっかしは最後まで貫き通させてもらうぜよ」
「さっきからペテンってなんのことだろうと思ってたんですけど、テニスに関係する話だったんですか!?」
私の驚いた顔に先輩はにやりと笑う。
「おまんが知らない俺じゃあ。どうじゃ、見たいか?」
「見たいです!」
私の知らない仁王先輩。
むしろ知らないことばかりなのだが先輩のその言葉になんだか胸がどきどきする。
「もうすぐ全国大会が始まる。おまんが応援に来てくれればたっぷり見せてやれるんじゃが」
「もちろん!絶対応援に行きます!」
先ほどから若干かぶり気味に返事をする私を見て先輩は笑う。
「そんなに目キラキラさせとる奴初めて見た」
「え!?…キラキラ?…もう、からかわないでください」
仁王先輩のことをもっと知りたい。
そう思う一心からつい食いついてしまったことに少し恥ずかしくなる。
「おまえさんはずっとそのままでいんしゃい。俺は、そんなおまんが好きじゃ」
優しく笑う仁王先輩。愛されるということは、こんなにも心が穏やかで幸せな気持ちになることを今日初めて知った。
今まで知らなかった感情を仁王先輩が教えてくれた。
私も、できる限りそれに応えたい。
今なら言えるかも。
「仁王先輩…私、先輩のこと」