第1章 *テニプリ*仁王雅治*
私もそっと抱きしめ返すと、先輩は小さな声で「すまんのぅ」と呟いた。
「どうしたんですか?」そう優しく聞き返すと先輩はぎゅうっと力強く抱きしめてくる。
「…苦しい」背中をポンポンと叩き思わず笑ってしまった。
先輩は大きなため息をついたかと思うとつられて笑い出した。
「だめじゃだめじゃ。どうも、おまえさんの前だとまったくペテンがかけられんのう。平常心がたもてん」
ペテン?また物騒な言葉が出てきたなと思いながら「私にそんなものかけようとしてるんですか?」と口を尖らせる。
「そう怒りなさんな。人を欺くのは俺の専売特許ぜよ」
今までにない初めて見る自信に満ち溢れた笑顔。言ってることは怖いけど何故だろうか、すごく惹かれてしまった。
「私のことは欺かないでください…私の前では素直な仁王先輩でいてくださいね」
自分で言っといてなんだが、素直な仁王先輩というのも怖い気がするが。
「おまえさんはまっすぐでいいのう」と、先輩は笑った。