第1章 *テニプリ*仁王雅治*
初めての彼氏に自分も浮かれていたのか時間が経つのを忘れ話し込んでいた
。気付けばすでに夜8時を回っている。
私の両親はそこまで厳しくなく特に門限などはなかったがさすがに遅くなりすぎた。
「仁王先輩!もう帰らないと!」と、せかしつつ部室の鍵を閉め足早に出る。
校舎は職員室と体育館だけまだ明かりが灯っていた。夜の体育館では町のバスケやバレーのチームがよく練習に使っている為、この時間でもまだ人の気配はある。
部室の鍵を返すために職員室まで行かなければならないのだが、許可なくこんな時間まで残ることは許されていないのできっと怒られるんだろうな。と思いつつ、玄関の方へ歩いて行くと
「どこへ行くんじゃ?」と仁王先輩に止められた。
「え?鍵を返すんじゃあ…?」と言うと、先輩は持っていた鍵をくるくると回しながら「これは俺の物じゃき」とニヤッと笑った。
「本物の部室の鍵ならとうに赤也に返させた。これは、俺専用の合鍵じゃ」
合鍵…この人は本当にいろんな意味で恐ろしい。
そんな人が自分の彼氏になってしまった。
「もしや屋上の鍵も…」
恐る恐る聞くと仁王先輩はピヨッとふざけた返事をして答えをはぐらかした。
「屋上のを知ってるのは俺とおまんだけじゃからな」
そう言って口にシーっと人差し指をあてる。
「わかってますよ…もう、あまり危ないことはしないでくださいね」
まだ先輩のことはほとんど知らない。
これから少しずつ色んなこと知っていきたい。
そんなことを考えているとふいに先輩は手を差し出してくる。
今度こそ私はその手を素直に受け止めることができた。
少し恥じらいながらも私たちは手を繋ぎ合わせながら校門を出る。
「あれ?仁王じゃないか」
その声にパッと顔を向けると、そこにいたのは幸村先輩だった。
「幸村か、こんな時間に何しちょる?」
仁王先輩は何食わぬ顔で幸村先輩に話しかけた。
「それはこっちのセリフでもあるけど…」
幸村先輩と目があって、私はこんばんは。と小さく頭を下げた。
仁王先輩と繋ぐその手に少しだけ力が入る。
「ちゃんも一緒だったんだね」と先輩は微笑んだ。
「仁王、こんな時間まで彼女を連れ回してダメじゃないか。早く送ってあげなよ」
「ああ、これから送ってくところじゃ。幸村もあまり無理するといかんぜよ」