第1章 *テニプリ*仁王雅治*
「なんじゃ、私も好きですってセリフを期待しとったんに」
先輩は冗談まじりに笑っている。
「だってまだ先輩のこと全然知らないですもん!いじわるな人って思ってましたから…」
「じゃあ今から俺のことだけを考えてくれるんじゃな?夜寝る時も、朝起きても」
「それは…どうでしょうか…」
冗談じゃ。と、優しく笑う先輩を見てたらこの未知の感情の正体が少しずつわかってきた気がする。
「じゃあ、あたらめて言わせてもらうが…俺と付き合ってみんか?」
初めての彼氏は同じクラスの男の子で、一緒に勉強したり、一緒に帰ったり、2年に上がったらクラス替えで離れ離れになって悲しくなったり…
そんな中学生活を送りたいと想像をしていただけに、上級生の彼氏ができるとは誰が想像していただろうか。
きっと私今、顔真っ赤だ。
「とりあえず…よろしくお願いします…」
「とりあえずとはひどいのぅ」
そう笑っていたが、先輩はうーん…と何か考えだした様子。
せっかくおめでたい瞬間なのにその反応は一体なんなのか。
「どうかしましたか?」と聞くと、どうやらまだ私から好きだと言われていないことが不満だったようだ。
それを聞いて私は笑った。
「…まだおあずけです!」
「まぁ…今はそれでええか」
いつのまにか外灯は消えていて月明かりだけが笑い合いながらも抱き合う私たちを照らしていた。