第1章 *テニプリ*仁王雅治*
「私…どうしたらいいのかわかりません」
そのままの素直な気持ちを言葉にした瞬間、私の体は先輩に包まれた。
「俺を好きになりんしゃい」
全てが初めての経験。誰かに恋心を抱いたのも、こんな風に男の子に触れられることも。
私には刺激が強すぎて、そんな優しい声で言われたら本当に好きになってしまいそうで…。
けど、私には自信がなかった。
仁王先輩が私を好きになる理由がわからなかったから。
「どうして私なんですか?」
そう聞くと先輩はうーんと少し考えていたが
「じゃあこの際じゃ、少し俺の話に付き合ってくれるか?」
と、先程からの優しい声色のまま先輩が言う。私がコクンと頷くのを確認すると
「最初はただ幸村が羨ましくなったんじゃ」
と、話し始めた。
「おまえさん、絵を描いてたじゃろ?そりゃあまぁ熱心な視線を幸村に投げとったなぁ…ま、あれは残念ながら俺だったんじゃが」
あ、声だけでわかる。
きっといつものニヤニヤした顔で言ってるのだろう。
「そんなんじゃない!」と、恥ずかしさのあまり体を離そうとするも再びグイッと引き寄せられる。
確かに、私は幸村先輩を見ていた。
その儚くも美しい佇まいを絵を描くというのは口実で、本当は幸村先輩を見ていたかっただけなのかもしれない。
「まぁまぁ落ち着きんしゃい」そう頭をポンポン撫でられた後、仁王先輩は無言になってしまった。
疑問に思いそっと見上げると先輩と視線が重なる。
「…どうしたんですか?」
「やっぱ話すのやめようかと思っての」