第1章 *テニプリ*仁王雅治*
日が落ち始め辺りが赤く染まった頃、部活終了の鐘がなる。
幸村先輩の集合の合図がかかり、部員たちは整列していた。
とうとう終わってしまった。
美術部のみんなも片付けを始め、ずっとこんな調子で外だけを眺めていた私に心配の声をかけてくる。
大丈夫ー。とひらひら手を振り、先に帰ってて。と伝える。
これからしょうがなく仁王先輩に会うのだ。
鍵を返しに来いって言われたから。
大体なぜ私がわざわざ行かなきゃいけないのか。
文句と一緒に鍵を突き付けて、それで終わりにしよう。
もうからかうのはやめてくださいって言って、終わりだ。
そう決心してから、みんなが解散するのを確認して私は教室を出た。
外は照明の灯りがついた。
校内で部活をしていた生徒も徐々に帰路につき、玄関にいた生徒もポツポツと1人、また1人といなくなっていく。
テニス部であろうカバンを抱えた生徒も数人帰っていくのが見えた。
仁王先輩は本当に部室で待っているのだろうか。
決心が揺らぎ始めたその時、私の中では有名人の赤也さんが玄関へとやってきた。
ここは聞いてみるべきか。勇気を出して、声をかけてみた。
「あの、すみません」
鼻歌を歌いながら下駄箱の靴を変えていた赤也さんは、へ?と顔を上げた。私が仁王先輩の居場所を聞こうとしたその時、赤也さんは突然大きな声を出した。
「まさか!?」
ビクッと一歩後ずさりをする私。
「まさかとは思うけど…まさか…俺を待ってた…とか!?」
「…え??」
なんだか嬉しそうな顔をしている赤也さんに申し訳ない気持ちになりながらも、違います。と答える。
すると、先ほどの顔とはうってかわってやる気のない返事が返ってきた。
「はぁ…で、なに?」
そんなに態度を変えられると聞きづらいが思い切って聞く。
「あの、仁王先輩ってまだ部室にいました?」
仁王先輩??と物凄い形相で睨みつけてくる。こわい。
赤也さんは、「まーた仁王先輩かよ!どいつもこいつもよお!」とブツブツ言いながらも、まだ部室にいたけど!と怒り気味に教えてくれた。
「ありがとうございます…」とお礼をして私はすぐにその場を離れた。
こわい。