第1章 *テニプリ*仁王雅治*
仁王先輩は男の子に追いつくとペシッと頭を叩いて追い越していく。
「ちょ!…なんすか仁王先輩!!」
と、大きな声がこちらまで聞こえてくる。
仁王先輩がまた何か挑発したのか、こちらには届かなかったが
赤也と呼ばれた男の子は、くっそー!ぜってー負けねぇ!と叫び声を上げた。
すると今度はコートの方から怒号が。
「こら!赤也!真面目に走らんか!」
この声はいつも聞く声だ。私はてっきりこの人が部長さんだとばかり思っていたのだけど。どうやら副部長さんらしい。
この声にビクッと体をこわばらせる赤也くん
「なんで俺だけ!?」と悲痛の叫びを上げた。
それを見て笑う仁王先輩。
あ、笑ってる。
人間なのだから笑うのは当たり前のことだが仁王先輩に関しては別だ。
あの人の笑い顔と言えばニヤッと意地悪そうな顔しか浮かばない。
あんな風に笑うんだ。と、その姿は少し新鮮に映った。
私にもそうやって笑ってくれればいいのに。
なぜあんなにいきなり抱きしめたりとか、好きだとか、そんなことばかり言ってからかうのだろう。
と、考えたところで私は我に返り顔を覆い今の記憶を打ち消した。
別に私に笑ってくれなくていい。
私にはなんの関係もないんだから。
いつのまにか、2人は走り終えたのかコートへと戻っていく。
コートではすでに試合形式の練習が始まっていてそこには幸村先輩の姿がある。
体育すら先生に止められてたのに部活なんて大丈夫なのだろうか。
そんな私の心配をよそに幸村先輩は一点も譲らずあっさりと試合に勝ってしまっていた。
むしろ動き足りないくらいなのだろうか?
ベンチに戻っても汗一つ拭う姿がない。
これが立海テニス部の部長。さすがに強い。
今すぐにでも飛んでいって今の試合見ました!すごかったです!と言えたらいいのだけど。
そんなことをしたらフェンスの後ろで見てるあの女子数人に囲まれて袋叩きだろう。