第1章 *テニプリ*仁王雅治*
美術部の仲間が続々と教室へやってくる。
「あはは…私はもう描き終わってるから今日はやることないんだけどね」
「えー!羨ましい。明後日締め切りなのに私まだまだかかりそうだよ」
げんなりと肩を落とす友人に頑張れー!と明るく声をかけた。
今日は特にやることがない。
本当なら今すぐにでも帰るところなんだけど…そうもいかない。
昨日の帰り道、幸村先輩に部活見学しますって言ったし
それに…仁王先輩にこの鍵を返さないといけない。
私はいつもの窓際の席に腰をかけ、ぼーっと部活の様子を見ていた。
いつのまにか3年生たちもコートに到着し、今はそれぞれストレッチなどを行なっているところだろうか。
幸村先輩はというと、腕を組みなにやら1人の男の子と話をしている。先輩がグラウンドの方を指差すと、男の子は深く頭を下げグラウンドに向かって走り出した。
こんな光景は割とよく見る。
今走ってる男の子は今までにも何度か走らされているところを見かける私の中で有名人であった。
頑張れ。と、心の中でつぶやく。
グラウンドに目を移した瞬間
「えええ!?」
と、思わず声を上げて立ち上がってしまった。
「どしたの!?」
前の方にいた友人がびっくりした顔でこちらを振り返る。
「なんでもない!ごめんね邪魔して…」
私は苦笑いしながらゆっくりと椅子に座り直した。
あの男の子の他にも先にグラウンドを走ってる人がいるなーと思っていたら、それは仁王先輩だった。
あの先輩何かやらかしたのだろうか。
再び机に頬杖をつき半ば呆れ気味にその様子を見つめる。