第1章 *テニプリ*仁王雅治*
あれから数日。今はようやく迎えたお昼休み、色鮮やかなお弁当を囲み友人らと楽しく談笑していた。
男の子たちは昼食もそこそこにそれぞれバスケやサッカーをする為に教室から1人、また1人といなくなっていく。
文武両道を謳うこの学校、昼休みでさえ部活の練習を生徒は大勢いる。
ふと窓から見えたテニスコートでは普段なかなかコートを使って練習の出来ない1年生たちが数人、打ち合いをしていた。
そんな時、教室のドアがガラッと開くとクラス中が若干のザワつきを見せた。
「ねぇ…誰だろうあの人…3年生?」
友達のその声に私は後ろを振り返ると、そこに立っていたのは見覚えのある銀髪。
仁王先輩だった。
その目立つ頭で気後れすることなく1年の教室に入ってくる先輩は、見るからにこれからカツアゲをするターゲットを見定めるかの如く教室中を見渡している。
そして私と目があった。
「お、いたいた。おまえさんを探しとったぜよ」
クラス中の視線が私に集まる。
そして友達が心配そうな目で私を見ている。
「何かしたの…?」
何かしたのと言われれば私は何もしていない。むしろ昨日のことは被害者と言ってもいいだろう。
仁王先輩は私の元までくると、
「ちょっと今、出れるか?」
と、声をかけてきた。
「…大丈夫ですけど…」
クラス中の視線が痛い。
私は今、この人に少なからず恐怖を感じている。
不安そうな顔をしている友人をなだめているが実際私も顔が強張っている。
視線が集まる中、私は先輩と教室を後にした。