第2章 .金木犀と沈丁花
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螺旋階段の最段を踏みしめた先に響き渡る足踏みミシン独特の音。
そのミシンを初めとしたアンティークを特徴としたフロアは、奥さんの趣味だそうだ。
装飾品が並べられたテーブルも滑らかな曲線を描いた足と、花の彫りを施したところが気に入った、だとかで先週骨董品店から購入してきたらしい。
こうして服のデザインだけでなく店の内装も自分のセンスで飾るところが、店と商品の雰囲気をマッチさせていて何人ものお客様を虜にしてきた。
『こんにちは奥さん!
頼んでたアレ、出来上がってますか?』
階段からは死角になっている工房へ届くように声を張り上げれば、響き渡っていたミシンの音が止まった。
ちょきん、と言ったハサミの音がしたことからちょうど縫い終えたところだと思われた。
奥さん「その声はちゃんね!
ちょうどいいところに来たわ、こっちにいらっしゃい!」
今出来上がったところなの!、と言う奥さん。
売り物が並べられたテーブルの横を通り抜けて、奥さんのいる工房に行く。
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