第3章 三月三日
「時音さん、雛祭りを模した祭りをしませんか?」
宗次郎さんと廊下を歩いていると唐突にそう切り出された。
「えっ?」
「今日は雛祭りの日です」
宗次郎さんがにっこり微笑む。
「どんな事をするつもりなの?」
「由美さんに会えば解ります」
宗次郎さんが由美さんの部屋に私を案内してくれた。
「あら坊や。時音も。どうしたの?」
「由美さん、今夜、由美さんは志々雄さんと雛祭りを模した祭りをいたしますか?」
宗次郎さんが由美さんに訊く。
「ええ、するわよ」
「由美さん、十二単をお持ちでしたら貸していただけますか?」
「いいけど、十二単は貴重だから汚さないで頂戴ね」
「はい」
宗次郎さんが由美さんから十二単を受け取った。