第3章 胡蝶蘭~嫌がらせと久しぶりの対面~
それにここにいれば嫌でも噂が聞こえる。
紗和や愛心の事だ。
あのふたりは活発で笑顔が絶えない。
私とは違って武将とも関係を築いていけるだろう。
でも私は女中たちの噂を聞く度にあの時に死んでも良かったんじゃないかとか考えるようになった。
なるべく、ネガティブな思考はやめようとしても長年の思考のせいでなかなかに治らない。
「...六花様、お気になされませんよう。六花様は出来ることを少しずつしていらっしゃってるじゃないですか」
「...そう見えるの?」
「はい。どこか悲しそうに...」
楓乃は毎回そう言ってくれる。
優しい人なんだろうと思った。
「そう言えば、六花様の御家族などおられるのですか?」
「...家族......」
「はい」
「...家族いた..」
「......え?」
そうだった。
家族は確かにいた。
でもその家族は私を殺そうとした。
いつだって私は誰かに憎まれ疎まれ...黒い憎悪にしていく。私の存在なんてないように。
「んーん。家族はいたよ...会えてないけど」
嘘だ。
もうずっとずっと昔から会ってない。
会わない方がいい。
そうもしないと苦しいから。
私がいる事で崩れてしまうから。
「そうですよね...私にもいるんです。夫と娘が。今度3人で遊びに行くんです」
「そうなんだ...幸せそうな話聞くの好きだな」