第7章 阿吽の錦
紫娜がいつも通りの動きに戻るのにはそう時間はかからなかった
悠大との勝負で互角程の力に戻った時は以前の勝負から2週間ほど経った時である
椿用の面も作ってもらい、紫娜の面も手入れを完了した
「紫娜、入るぞ」
部屋に入ってきた紫璃は明日発つ紫娜に餞別を伝える
「お前最後に何やってんだよ」
紫娜は襷をし、シグと一緒に部屋を掃除していた
四つん這いになり畳を乾拭きしている二人を見て呆れる他なかった
「お前なんで行っちゃうんだよ...」
「え?」
「なんでもねぇよ。悠大がもう一回勝負したいとさ」
早く言ってよと言わんばかりに襷をとり簪を外す。あくまでもはしたないなどの言葉とは縁がないように見せながら急ぐ姿は14歳には見えなかった
取り残された紫璃はなんとなく紫娜がしていた代わりに掃除の続きをする
「クスッ...紫璃様も骨が折れますねぇ...」
「笑ってんじゃねぇ...俺あと何年待たされるんだろう...」
「紫娜様は紫璃様を1番最初にできた友達だって言ってましたよ」
大きなため息をつく
「もう俺無理じゃん...」