第7章 阿吽の錦
時間が流れるにつれて手への痺れが強くなる
悠大の息を切らす程この3ヶ月で成長した
左で紫娜から伸びた刀を受け止め右で首に刀をあてる
まだまだ手が届かない
柱ほどの実力はあるのに対して、悠大はそんな紫娜をも一本取ることができる
悠大の力は計り知れずそんな悠大を紫娜は尊敬していた
「父上から聞いたが阿吽の型というのは数字などの型とは違うのか」
「阿吽は物事の始まりと終わりの意味の他に二人以上で物事を行う時の互いの気持ちが一致するという意味があります」
真剣な眼差しとその背は父にそっくりだった
「自分の心と刀の息を合わせて最大限の技を繰り出すような感じです」
沈黙が流れる
なぜ何も言わないのか
何かを考えるように押し黙ってしまう悠大を自分は何かしでかしてしまったかのように心配そうに見つめる紫娜
重苦しい空気を破ったのは悠大だった
「あれほどやつれていたのに治ったみたいでよかった。先日に言った歪みも治っている。紫遊佐は錦家の汚点であるが、そなたは一族の誇りだ。胸をはれ紫娜」
真っ直ぐな言葉に裏などない
ただ紫娜は嬉しかった
初めて悠大から認められた気がした
照れくさくなったのか目の前からは悠大はいなくなっていた
きっとこれで悠大と会うのは最後だろう
自分しか居ない中庭といなくなった悠大の背に一礼をした