第7章 阿吽の錦
決まりを破ることになる
面は作ればいい
夜の呼吸も継げる器を大きくすればいい
ただし銀の髪は遺伝的なものであるために救いようがない
紫悠の顔が曇る
もしこれが父の紫羅義だったら破門ものだ
「二つ目は呼吸についてです」
紫悠の返事も待たずに二つ目の話をする
「先程、錦を統一すると言っていましたが、
東は西と違い"阿吽の型"を受け継いでいます
私は完璧ではありませんが統一するのであれば
"阿吽の型"は途絶えるでしょう」
紫娜は間髪入れずに話続けた
元々意思は固いほうだ
真っ直ぐ見つめるその眼差しは二ヶ月前とは大違いだった
「二つのことを踏まえたうえで
椿のことを前向きに考えて頂きたいと存じます」
大きなため息をつく
(これほど賢くなったのか)
前に出会った時はやっと腰辺りの身長だったのが今では自分の意見を主張しその意見を叶えるために自ら頭を下げている
「...椿殿の姓はどうする」
手を頭の前で添えたまま言った
「彼女が錦を名乗ることをお許しください」
「...もういいわい!」
突然だった
静かでつまった空気に痺れを切らしたのか大声をあげた紫悠の声に紫娜が驚く
「紫娜、お前は家族のことをどう思っている?」