第7章 阿吽の錦
「お前紫遊佐にはあったのかよ」
静かに聞いてくるその顔には幼さの滲み出る素直な姿だったが、声は興味本位で聞いた訳では無いことがわかる
「幻覚ではしょっちゅう会うけど
一回は会ったよ。殺されそうになったけど」
笑い話にするにはまだ早いが、口角を上げてみせる
紫璃は右手が強く握りしめていた
「俺が代わりにそばにいてやるよ!」
少し得意げな紫璃の鼻先を折るのは
残念な紫娜である
「へ?別にいいよ?そばにいなくても私強いし」
紫璃からため息が漏れる
「でもありがとう
紫璃だけだよ。親戚の中でもこんなに話せるの」
顔が赤くなったのを悟られまいと反対側をむく紫璃
東では紫遊雅、西では悠大が継ぐかと誰もが思っていた時、双方の力比べでは悠大が勝った
悠大は紫娜だけではなく家族も忌み嫌う
そして悠大、紫璃の弟妹たちは
"東には負けるな精神"より
紫娜をよく思うものはいなかった
「お前調子乗ってると後で痛い目見るからな...」