第7章 阿吽の錦
私が何か喋るとでも思ったの?
前々からそんな喋るほうじゃなかったじゃん
それに叔父上は優しいけど父上のことも嫌っていたし
私もしょうがないから預かってくれているだけ...
でもそんなに見つけられたら喋る他ないよね
「私ハ...東ヲ継ギマセン...」
驚いた顔
継ぐわけないじゃん
女だし面倒だし
西の中で勝手に争ってればいい
嬉しいでしょ
私が継がないから
「...この話はまた今度にしよう」
部屋を出ていく紫悠
相続争いでもし父上に勝っていたら叔父上が東を治めていた
体が動いた
縛りがスっと溶けていくように
こんなんなら蝶屋敷にいさせてもらえればよかった
また刀を振らなきゃ
そう思うと
ああ、やっぱり体が動かない
「紫娜様 お食事をお持ちしました」
ドロドロになった重湯を口に運ぶ
味もしなければ食べてる気もしない
「名前...ナンテ言ウノ?」
二つに髪を結っている姿はまだ幼さい
けど私の世話をする横顔は大人びている
私が話しかけたことに驚いているのか
忙しなく動いていた手は止まり初めて目が合う
「シグです すみません何かしましたか?」
少し怯えてる
改めて聞いた声は綺麗で心地よかった
「シグ...ありがと」
声になった