第7章 阿吽の錦
部屋に入ってきたのは叔父上の錦紫悠(しゆう)だった
父上と瓜二つの顔なのに性格は全く違う
叔父上とは話したくない
父上の顔で優しい温厚な言葉が出てくるのは
背中がゾッとする
「喉が枯れてしまったようだね
心の調子はどうだい?」
そんなこと聞かれたら大丈夫としか言えないじゃん
正座して頭を下げようとしたけど
上から抑えられたように
体が動かない
昨日は動けたんだけどな
錦家は1000年ほど昔に華族の一つとして朝廷に仕えてきたが記録としていつからか消えてしまった
高い剣術から鬼滅としての道を進むようになったのだ
そして一つは本家で受け継いでいく錦で、もう一つは東京から鬼がでないようにと県境の鬼を滅する錦がある
前者を東(アズマ)ノ錦、後者を西(カワチ)ノ錦とよぶ
紫娜の父 紫羅義(しらぎ)と叔父の紫悠が東と西を取りまとめていたが三年前より東は途絶えてしまう
そして今では誰が東を引き継ぐか相続争いがおこっていた