第7章 阿吽の錦
「紫娜様、失礼します」
ここに来て2週間がすぎた
ここの部屋に入ってきたのはこの使用人の向井さんと叔父上と叔母上だけだった
「お身体拭かせて貰います」
服を脱いだ
お腹にあったあざはすっかり消えている
椿元気かな
温められた湯に手拭いを漬け背中の傷周りを拭いていく 鏡を見るとやせ細ったなと思う 顔の色は青白く肋骨は浮いていた
喉に手を当てる
何日間喋っていないのだろう
叫んでいたせいで喉が潰れてしまった
でもどうせすぐ治る
きっとこの思いも
きっとこの想いも
向井さんは鹿島さんとは正反対でむしろ歳が近かった
たぶん歳下 働いて稼いだお金は仕送りにしているのだろう だいぶ手つきも慣れてきた 最初は初々しく私の機嫌を伺ってたけど、伺う必要がないと思ったのか最近はのびのびゆっくり仕事をこなせている
ようやく体を拭くのが終わり
新しい浴衣に着替え、また布団に入る
何日もそう過ごしてきた
いつかは治る
ただもう疲れてしまった
正直もう戦いたくない
閉ざした襖から声がした
「紫娜入るぞ」