第6章 悪夢
小話1______
びびった...
なんでこいつ狼なの?
怖いわ
できるだけ起こさないように左手と自分の右手を縄で繋ぐ
夢を...
いい夢を見せてもらわなきゃ
妹が死ぬ前
飢えなんて字も知らないぐらい幸せな夢を
なんだ?
初めてこんな夢を見た
今までの人はだいたい家族とか愛だの冒険だのだったのに
魘夢様はいつも幸せな夢を見せているのに
これが幸せなのか?
いや、気にしちゃいけない
早く精神の核を壊さなきゃ
真っ白な世界で階段がたくさんあるこの夢の中にも行き止まりがあった
魘夢様に貰った針で世界にヒビを入れる
...
言葉を失った
さっきの真っ白な世界とは裏腹に
とても美しい夕焼けがあった
銀の糸で紡いだような光には真っ赤な花弁が咲き乱れ、近くには竹林があり
普通の人の精神の核よりゴチャゴチャしてる
しかし
美しい夕焼けには雲ひとつないが銀色の鋭い雨が降っていた
その鋭い雨が青年に刺さる
痛みが走る中、精神の核を探し続けた
精神の核の近くに一人、銀髪の少女がいる
本人ではないけど...
本人の化身?
その少女は精神の核を雨から守るために傘を差していた
しかしその傘は雨に打たれ続け傘とは言えないものであり、少女自身も、精神の核もボロボロだった
青年は痛みに耐えながら針を振り上げる
そんな青年を見た少女は
精神の核から青年に
傘を差したのだ
まだ生きていた頃の妹に似てる
妹はこんなに優しくなっていたかな
兄ちゃんダメだよ
お前のとこに行けないよ
地獄に行かなきゃだよ
泣き崩れる青年
少女は傘を刺し続けた