第6章 悪夢
遺書と大きく細い字で書かれた封を切ると三つ折りされた2枚の紙が入っていた
[清きこと 千夜の如く
凌ぐこと 狼の如し
夜あるとこに朝があり
夜あるとこに月があり
夜なきとこに鬼はなし
死なずんば滅せ
銀の毛皮を纏いし血よ ]
何を怯えていたんだろう
父上のことだから私たち兄弟について
書かれてるわけないじゃない
父上、あなたの息子は鬼になったのですよ
私はあなたを恨んでいない
ただ...?
2枚重なっている
[錦 沙
錦 紫遊雅
錦 紫娜
錦 紫遊佐
武運をこひねがふ]
母上の名前もある
兄さんのも、私のも
紫遊佐のも
涙は出てこない
背中や首にある無数の傷も
兄さんが失った片目も
紫遊佐が失った心も
みんな父上が奪っていった
それは父上のせいではなく、ただ弱かったから
会いたいなぁ母上に
兄さんも父上も生きているうちに優しくして欲しかった
鬼を殺すの嫌だなぁ