第6章 悪夢
藤の花の家にて
錦少女の様子がおかしい
ここに宿泊するようになって5日が経った
ずっと顔が暗くいつも以上に口数が少ない
「錦少女、何かあったのか?」
「いえ...とくに...」
無理して笑っているように見える
どの親族も2ヶ月前にはもう着いていたはずの人である
列車は明日の昼にここに着き、明後日にはここを発つ
袴を脱いだ着物姿はどこか浴衣を匂わせ
どうしてもあの時のことを思い出してしまう
きっと俺は今顔の赤さを隠しきれていないだろう
「実は嫌な予感がしていて...」
「ムッ予感は予感に過ぎない!現実になるとは思えん!」
「しかし...どうしても胸騒ぎがするのです
何かを失ってしまう...」
驚いた
自分よりも強く、常に前向きな姿勢だった少女が弱気になっている
「錦少女は俺が死んだら悲しいか」
自分の口から出てきた言葉とは信じられん
確かに錦少女が言う嫌な予感は俺も感じていた
「今...なんて言いました?」
驚いたことに目の前の少女は怒っていた
錦少女に勢いに押し倒され、
襟を掴まれていた
どこにこんな力があるのだろうか