第4章 蝶と柱
「舞ちゃん、ここかな?」
コクリ
「ごめんください...」
誰もいないようだから戸を開けると一人の女性がいた
「なんだようるさいねぇ無視したら帰ると思ったのに...おい、なんでお前がここにいんだよ!山に捨てたはずだろ!」
一瞬で血の気が引いた
だから、この子は首を縦に振らなかったのか
「こいつのせいで迷惑してんだよ!
さっさとどっかやっちまってくれ!
こいつが勝手にできたせいで男には捨てられるし全部こいつのせいなんだよ!」
左手を握る舞ちゃんの手が強くなっていく
酒臭い
服装も髪も乱れている
怒りが収まらず鞘を抜こうとしたが
手が...
舞ちゃんは声を殺して泣いていた
我慢が出来ず後悔した
ガシャン!
酒に酔う女性を押し倒した
首を絞めそうになった手を握り床に叩きつける
「自分の責任すら背負えず子供に押し付けることしか出来ないのなら地獄に堕ちろ」
できるだけ低く小さく
舞ちゃんの耳に届かないように
こんなところにいたくない
部屋を出る時
「この鬼!!化け物!」
舞ちゃんの耳を塞ぐ
未だに声を殺して泣いている舞ちゃんを背中に乗せて走った
自分はなんて残酷なことをしたのだろう
強引に連れてこなかったら良かった
「舞ちゃんごめんね」
許されない
舞ちゃんの目は真っ赤に腫れていた
「紫娜さん
あのね本当は名前ないの」