第16章 うつみせの
ここは夢の中と言っていいのかな
でも刀を握る感覚もあるし
五感もしっかりしている
久しぶりに会えた紫遊佐は
あの頃と変わっていなかった
鬼って身長 伸びるんだ
顔つきも少し凛々しくなった
でも子供のまま
うん
あの頃と変わっていない
刀をお互いにぶつけ合う
重苦しい音まで聞こえる
でもそれ以上に
あぁ、腕をあげたんだなぁとも思った
前に戦った夜
私は陽の光に助けられた
腕を上げたなんて笑っちゃう
私が張り合えるぐらいに強くなったのか
どうしてこんなに私は落ち着いているんだろう
私が倒した鬼に傘を持った鬼がいた
冷たい雨男のようで暖かい人だった
彼は母に会えただろうか
彼の母は彼を許せたのだろうか
私の前から消えた少女
少女の母は少女を覚えているか
あの母親に対して苦しめばいいとさえ思っていたあの時
今では後悔している
椿を産んでくれた
もっとこの世界が平和の言葉に溺れていなければ
あの親子は幸せだったかもしれない
ある娘がいない夜
娘の家族は鬼と化した
娘は家族を失った
でもあの時
ある息子の家族は鬼と化した
そしてその息子は姿を消した
家族を失ったのは私だけじゃない
「紫遊佐」
私はカタリカケル
家族を愛していたと