第16章 うつみせの
「鬼は...復讐とか憎悪とか...
悲哀とか憤慨が....形になるんです
一度膨らむともう...戻れなくて」
袴姿の紫遊佐はあのころと変わっていないように見える
それでいて、いや、それよりも小さな子どもに 泣いている子どもに見えた
「あなたを殺したくないのに
鬼になった僕が...許してくれない...!!
だから あなたを殺したい自分がいる」
実際あったらどうなるんだろうって
考えない日はなかったけど
あぁ どうすればいいのかわからない
まだ私の身体からはそんなに離れていない
幽体離脱って言うのかな?
紫遊佐の歌にかき消されて聞こえなかったけど
後ろでは煉獄殿と宇隨さんが紫遊佐と戦っていた
あの紫遊佐も身体だけなのかもしれない
ただ私は心なしの身体を動かせる程の器用さと
まだこの状況を完全に飲み込めていない
煉獄殿は気づいていないかもしれないけど
私の弟なんだ
紫遊佐は殺されてしまうだろう