第14章 嚆矢
あの人を何となく思い出してきた
髪の白さ
毛先の青さ
僕に似たところは何一つない
多分血が繋がった人
姉...かな
彼女が生きてると
僕の気持ち悪い感が教えてくれている
でもなんだ
父上も兄さんも母さんも
死んで悲しいとは思わなかった
そうだ
そうだよ
復讐だ
姉さんを殺そう
一人だけ生きているなんてつまらない
錦が憎い
そして
姉さんを殺したら
僕も死のう
僕の中にある人の心が
きっと僕(体)を操って
鬼の心を殺そうとするから
──────────
決心をしてからは早かった
いくらでも人を殺し
いくらでも人を喰った
ただ髪を結う簪が揺れる音を聞く度に
心が簪に刺されるような感覚があった
何度も折ってしまおうと
手をかけても
僕には折れなかった
「童磨さん お話があります」
久しぶりに童磨さんに会う
前に会った時よりも
僕は鬼らしくなっただろうか
「あぁ 久しぶりだね
随分人を喰ってるみたいだね
顔色も良くなったみたいだし」
「童磨さん 僕は今、錦を完全に潰したい
そのために姉を殺します
なのでもし姉に会う時があれば
僕が潰したことにしていただけないでしょうか」
潰せるものなら自分で潰したかったとは思う
ただそれは出来なかった
だから最後に生きている姉だけは苦しめたい
弟の僕が家族を殺した
なんていい響きだろう
苦しめられる
あいつを
毎度毎度悪夢として出てくる名前を思い出せないアイツを
こんなにいい響きなのに
僕の心は血を流す