第14章 嚆矢
「俺一人だったらすぐに殺されると思ったんだけど何故かすぐに潰せたんだよね」
そうだ
錦ならいくら上弦の弍だとしても戦えたはずだ
父上や兄さんそして...
名前が...出てこない
誰だ
顔もまだモヤがかかっていて思い出せない
「..君がいなくなったからじゃない?
って聞いてないけど」
名前が...思い出せない
だけど確かにそこにいる
顔はモヤがかかっているけど
なんとなくそこに
「...まぁいいや
人肉食べたら前の家に行ってみるといいさ
多分今もあるんじゃないかな」
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真昼なのに
朝とは天気が変わって雨が降っているおかげか
外に出ていても何ら支障がない
名前が思い出せないあの人も
錦を潰した童磨さんによって殺されたんだろうか
もしそうだとしたら
考えると心の底がざわついて気持ち悪くなる
この気持ちの名前も
思い出せないあの人の名前も
痛い
今まで鬼でいて感じなかった胸の当たりが
耳障りな音をさせながら軋み出している
汽車で女性と会ってからおかしい
そんなことはわかりきっている
彼女を殺さなきゃよかった
そんな後悔が苦しい