第14章 嚆矢
連れられたところは
一見ただの家に過ぎなかったが
人がいた
話を聞くと童磨さんは教祖らしい
これなら人を探す手間も省けるだろうと思ったけど
何故か人を食うために
教祖をしている訳では無いらしい
よく分からないけど
上手く言えないけど
やっぱりこの人は少し気持ち悪い
でも...
「紫遊佐はさっきから悩んだ顔してるなぁ
なんかあったの?」
この人は絶対周りに人に共感性を示していない
きっと僕にこう優しくしてくれているのも見かけだけだ
分かってはいる
信用してはいけないひとだ
でも信頼はしたい
「僕と童磨さんは...
どこで出会いましたか?」
どうしても思い出せない
いつの間にか人を殺すようになった
でも人を殺していなかった記憶は確かに残っている
あの貴婦人に会ってから
ずっと何かがおかしい
頭の中で歯車が錆びてギシギシと耳障りな音を立てている
「鬼殺隊の中であまり知られていないらしい
錦一族の片割れを潰しに行く途中で
君にあったんじゃないかなぁ...
錦は鬼のなかじゃあ有名だったから
産屋敷と刀鍛冶の里の次に見つけるべき場所だったし
君は普通の錦より
髪の青いところの方が長いから
錦じゃないと思ったけど
あの時君がいたおかげで
錦一族の片割れ、潰せたよ」
僕は錦紫遊佐
全ての記憶が戻った
皮肉だなぁ
僕が殺したんだ
あんなに憎んでいたおかげで涙は出てこない