第14章 嚆矢
あの日から何日もさまよった
人を喰わなかった
人を殺したくなかった
人を生かしたいと思った
初めての感情のはずなのに
自分はこれを強く否定したがる
頭が痛い
この痛みが始めてということは確かだ
だんだん肌がチクチクと痛むような感覚で目覚めた
あぁ僕は寝ていたんだ
もうすぐ完全に夜が明け切るだろう
霧で反射した光が肌に刺さって少し焼かれたのか
もうそろそろ人を喰わないと
前に1度人を喰わないとどうなるかを試した
最初は耐えられる
しかしだんだんと肉に深くに腰を下ろした
鬼舞辻の血が騒ぎ出し
さらに我慢をすると
気づいたら必要以上に人を殺していた
人を探そう
喰わねばならない
喰わなければ奥にいる自分が喰う
「あれ?あの時の銀髪君じゃないか
名前忘れたけど」
奇抜な格好に奇抜な髪型
すんなり名前が出てきた
「童磨さん...紫遊佐です...
どうしたんですか?」
奇妙な笑い方
始めて会った時からこの人は苦手だ
...始めて?
「どうしたの?って君こそなに?
人を喰ってないの?
しかしあれだぁ
髪を結くと雰囲気変わるなぁ
俺のところおいでよ」
別に逆らおうとは思わなかった
でも行きたくもなかった