第14章 嚆矢
きっとこれは怒りじゃない
悔しさでもない
もっと前から感じていたのに
何故今日爆発したのか
知りたかった
今日気持ちが抑えられなかった理由
自分が哀れで惨めで
聞こえる音が自分の歩く音だけだと気づいた時
ようやく自分の感情がわかった
「孤独」だ
姉さんの存在が大きかったんだ
でも姉さんがいない間が
辛くて気持ち悪くて
相当気が狂っていたんだ
もっとわかりやすい言葉にすると
「死にたかった」
ずっと考えてた
もしここで死んだら
どのくらいの人が悲しんでくれるのか
死んだ俺を目の前に悲しんでいる人を見られれば
少しは優越感に浸れたのかもしれない
でも実際はこの僕だ
紫遊佐という僕が死んだところで
悲しむのは誰もいない
だから死んでみようとした
刀を持って出てこなかったのは最悪
どうやって死ねるのかも知らないのはもっと最悪
色々考えて川に入ろうと思った
溺れて死ねるかもしれない
近くにあった川は季節が外れたように寒いのは
林が深かったせいだと思ってた
よく知らない林の中を歩いていくのに
ちょうど目の前に川が広がっているのは
神様も俺に死んで欲しいのかもしれない