第13章 咲いた花 あとは散るだけ
「ありがとうございます紫娜さん
次から検診してくれる人はいないから
自分でやるんだよ?」
「はい....っえ?」
初めて...敬語を使わなかった
初めて...
「私も紫娜さんのおかげで救われた
ずっと姉のようにと振舞ってきたけど
胡蝶しのぶを思い出させてくれたのは紫娜さんです
ありがとう...」
笑ってる
微笑んでるなんてものじゃない
初めてしのぶさんの瞳に
怒り以外の感情が見えた
あぁなんて綺麗な瞳なんだろう
本当は深い海の色をしていたんだ
怒りで赤が混じっていたから
藤色に見えた
美しいってこのことを言うんだろうな
そうだよ
鬼に殺されるのは喰われただ
しのぶさんなら
きっと喰われる前に鬼を倒せる
死ぬとは決まっていないんだ
「では診察は終わりです
柱稽古、頑張ってください」
「はい ありがとうございました」
背中と左腕の縫われているところに塗られた薬が
少しひんやりしていて冷たく感じる
優しかった
もちろん最初は怒ってたけど
初めて素顔が見れて
驚いて
しのぶさんの瞳に吸い込まれる感覚
まだ抜けてない