第12章 癒えない傷
明るさにはもう慣れた
ただし自分がどこにいるのか検討がつかない
あれは確かに椿の声だった
でも幻聴だったのかな
今までの幻は紫遊佐だけ
紫遊佐以外のものが幻として現れるほど
疲れているのか
やっぱり本当の現実なのか
後者であって欲しい反面
後者だった時にそれを受け入れられる程の余裕が私にあるのかがわからない
さっき何を話したんだろう
紫遊佐はなんて私に言った?
思い出せない
今9012本数えたところ
そうだ
あともう少しで数え終わる
そして2週目に入って
その頃には日が暮れるだろうから
また明日ここに来て...
「ここで何をしている」
「冨岡さん?ここは柱稽古で使う場所なんです」
よかった
ここで誰かに会わないと
頭が空回りするところだった
「ここは俺の練習場所だ」
汗がかわいて体が冷える
体が強ばってる
そりゃそうだ
幻聴に踊らされて
こんなのになれるわけない
紫遊佐に会えるのかもしれない
そして椿にも
「なにかあったのか」
「え?」
全く話しを聞いてなかった
あれ?
人の気配しなかったのに
なんでいるんだろう