第12章 癒えない傷
視覚はない
ならば幻聴か
「西の錦家をなぜ襲った...
なぜ私たちの錦家を襲ったっていう嘘をついた...!?」
もう紫遊佐の幻はないかと思ってたのに
「僕はまだ鬼を辞めるつもりは無いですよ姉さん」
前より寂しげだった
西を襲ったことは許せない
だけどずっと憎んでいた相手に
憎んでいた理由が違うとわかった後だったから
私は紫遊佐に
なんて思えばいいのかわからない
でも一つ変わったことがある
前よりも心が強くなったから
幻なんて怖くなかった
ここに聞こえる紫遊佐の声に期待をしなくなった
疑問をぶつけても答えが帰ってくるわけが無い
幻聴だから無視していい
8359...
8360...
8361...
「紫娜さん!」
そんなことなかった
もちろんこれからも心は強くなれる
だけど大して今は強くなかったみたい
面を外し目隠しをとる
暗闇から一気に虹彩に光が入る
ぼやけた世界が輪郭を取り戻して
やっとわかったこと
いくつも木の枝が折れた跡
もう一つ私以外の人がいた気配
あれは幻聴じゃなかったのか
でも
幻聴じゃないとしたら
最後に聞こえたのは
椿の声だったから
椿は生きているの?