第12章 癒えない傷
「お話させて頂きありがとうございました」
「こちらこそありがとう」
なにか言いたげに口お開いたけど
キュッと口を結び軽く微笑む
御館様を御館様と呼んでいた
普通なら父さんと呼べたのに
止められないのかな
御館様とあまね様のこと
他にないのかな
まだ日は高い
蝶屋敷に帰るのは気が引ける
炭治郎さんと玄弥さんに会うのが気まずい
この前簪を首に突きつけちゃったのに...
もう少し前に出ていれば
皮を突き破って
いつも鬼を斬る感覚とはまた違った
色鮮やかな血が出て
二度と炭治郎さんと話せなかっただろう
それより隊律違反にもなるのか
昨日不死川様と話して
私が玄弥さんに話してしまいそうだから
出来れば会うのは控えたい
実際あってみたところで
気にしているのが私だけっていう状況になりかねないけど...
さて...
どこに行こうか
と言っても
普通鍛錬するよね
みんなもそれが目的で
稽古してるんだから
産屋敷から離れていない
小さな山
とは言いつつ
名前がついていないだけで
それなりに高さはある
私が刀をもたせてもらう前に
一週間、こんな山に一人で放り出されたっけ
目隠しをされたまま
視覚以外の感覚を使う
もちろん食料の調達も自分でやるため
聴覚や嗅覚、触覚が必要だった
あの時についた傷はまだ残ってる
この山はその時を再現するには丁度いい
襷として使っていた布を目隠しとして巻く
布は白い
光を通さないように何重にもして
やっと目の前が暗闇になる
その上から狼の面に髪を下ろす
始めよう