第12章 癒えない傷
あー...
うん
さすがに今日一日でここまで来る人がいるわけないんだよなぁ
ひま...
もう宇隨さんの所を合格してる人いんのかなぁ
あぁでも自由に辞められるのか
行こうと思ったけど
ここから離れて産屋敷になにかあったらまずいしなぁ
いいや
産屋敷輝利哉様を伺おう
少しお話もしたいし
柱稽古が始まって一日目
山を集団で駆け下りる隊士達は見物だった
そして時折誰かの悲鳴を風が運んでくるのは
隊士達の活気をあげているようないないような
鬼殺隊を志して柱に稽古してもらうという
貴重な体験は
誰もが一度、心を折ってしまうものだった
「用心棒として受けたまりました錦 紫娜です」
「あぁ御館様から聞いているよ
鬼舞辻無惨を倒すことよりも私たちを優先してくれてありがとう
必ず勝つよ 鬼殺隊は」
あまね様の言葉を思い出す
[子供たちは生まれてからずっと鬼殺隊当主になるために早く大人に育てなければいけなかった]
現御館様と同じような口調、雰囲気
ただ足りない
無茶だ
これが当たり前の家なんだ
何百年もずっと
錦家が息を吸うように鬼殺隊になるのと同じ
産屋敷家は息を吐くように鬼殺隊を引っ張る
「紫娜 泣かなくていいんだ」
あれ 泣いてる
「ここで倒すためなんだ
私たちはずっとこうだったから」
嫌だ
仕方ないのに
仕方ないという状況を受け入れてる
なんにも見えない瞳
ずっと前の私も
こういう目をしていた