第12章 癒えない傷
「ねぇ不死川様 左手貸してください」
「そんなの自分で...あぁ、すまねェ」
あ、謝らせちゃった
「気にしないで下さい それよりほら」
隊服と言っても羽織として使うには少しもったいないが長さ的にも丁度いい
さすがに気づくよね
あるはずの袖を
通っていない左腕
きっと打ち合わせをした時に気づいたんだろうな
刀の持ち方も少し変わったし
不死川様の左手
私なんかの手より大きくて
ずっと刀を握ってきたんだろうな
皮膚が硬くなってるし
傷のあとが多い
「何しようと「いいから!」」
なんだろうこの光景
自分で言うのもなんだけど
言われるがままにされている不死川様を
傍観者側で少し見てみたいかも...
「なんでさっきまで喧嘩腰だったのに
急に固くなって黙るんですか?
ほら指広げて...!」
なんでだろ
また若干顔が赤くなってる
不死川様が広げた指と指の間に
私の指を絡める
掌底だけをくっつけて少し歪な円をつくった
その作った円で
落ちていく夕日を囲む
一日を照らす太陽に速さなんて考えなかったけど
この瞬間だけ
この瞬間だけが
早くすぎてしまう
「見て おまじない ちょっとだけ自分が好きになるヤツ
本当は自分の両手で作るんだけど...
あ、すいません 緩んで敬語を使ってなかった...」
「...カプ」
「え?!え!な、なんで私の指噛むんですか!
地味に痛いし ダメですよ噛みちぎったら
ただでさえ5本しかないんですから」
な...なぜ舐めて...
「もう帰りますかぁ 太陽も沈んじゃいましたし」
すっと手をはずす
あぁあぁ噛み跡ついてるし
紫遊佐にも噛まれたことあったなぁ
最後不死川様がなんにも言わなくなっちゃって
少し怖かったけど
なんだろう
久しぶりな感じ
今、私が笑えてる気がする