第12章 癒えない傷
隊服の襟を掴む
手が...震えてる
「ずっと前から死との距離感は変わっていないのに
急に身近に感じて
人を失う覚悟は前から持っていたはずなのに
私は次の戦いが
怖い...!」
一年前の自分に言ってやりたい
嫌いなものを数えていたのに
今は愛しいものを数えているって
そして失う怖さが糧になっている事を
「てめェは餓鬼が」
「え...えぇ!?
不死川様が聞いたのにそれはあんまりじゃないですか!?」
あわわ...
だから睨むのやめてっ!
怖い...いや、でもさすがにあんまりだから!
「誰かを失うのは怖ェもんだろォが」
え?
「ぁたりめェなんだよ
てめェは変な気はるんじゃねェ
イライラ済んだよォ」
「どうして...私に
こんな親切にしてくれるんですか?」
さっきまでは全く親切とは感じなかったけど
本当に驚いた
今日一日
ずっと太陽の軌道を眺めて
ただひたすら
戦いに向かうための覚悟を自分自身で
確立しようと必死だったのに
たった一言で
簡単に手の震えがなくなったんだ
そうだいつも周りの人が助けてくれた
不安定な私の心にささったのが
以外な人の一言だったりして
また私の背中に追い風が吹く
「俺とお前ェのなんつーか...
境遇が...似てんだよ...」