第12章 癒えない傷
明日から柱稽古が始まる
今日は一日、私が稽古を開く場所で
一人でいた
昨日のことを思い出す
「〜〜...
その時 当主と私はおそらく死ぬでしょう
長年悪化していく症状を抱えながら鬼殺隊をまとめあげた夫を支えようと私は最期まで尽くします
ですが母として
子供には生きて欲しい...!
だからどうか
子供のそばで 護ってください」
涙を流しているのに
しなやかな美しさと真っ直ぐ見つめる強さは
全く変わっていない
「紫娜さんは家族と向き合いながら
感情を繊細に表すことができます
子供たちは生まれてからずっと鬼殺隊当主になるために早く大人に育てなければいけなかった
せめてあの子たちには生きていて欲しい
だから子供達に、あなたの姿を見ていて欲しいのです」
血筋じゃなかった
私を
私自身をちゃんと見てくれていた
「あまね様、和泉式部が詠んだ詠をご存知ですか?」
とどめおきて 誰をあはれと 思ふらむ
子はまさるらむ 子はまさりけり
「和泉式部の娘は子を産む時に力尽きて亡くなりました その時、生まれた孫を抱えて詠んだ詠です
あなたは親と子を残して死んでしまったけど
どちらとの別れを悲しんでいるのでしょう
親の私よりも子を思っているのでしょう?
私もあなたを失ってこんなにも悲しんでいるのだから
という詠です
数百年たった今でも親が子を思う気持ちは変わらないのですね
あまね様 私の命を持ってお守りさせて頂きます」