第12章 癒えない傷
「おい 里には行かねぇのかよ
本当はそのためだと思ってたんだが」
「行って何になるんですか
もう用はな...ってちょっと!!宇隨さん下ろして...!!!」
「じたばたすんな 行くぞ」
手紙を読んだせいか乗り心地は悪いけど
風に当たったせいか
やっと気持ちが落ち着いてきた
自分が暴走する
そんな気分だったのが今はもう平気
宇隨さんは全く私のことを気にしないで走ってる
本当に何を考えているか分からない
振り回されてるけど
今はそれがちょうどいい
「こんなに跡形もねぇんだな」
道という道を埋めるのは
戦いで崩れた瓦礫の山だった
墓がいくつもあるが
どれも簡素なもので
本当になにもない
ここで何百もんの刀が生まれた
そしてこれからは違う場所で
鬼殺隊を支える何百もの刀が生まれる
「今ならできるんじゃねぇか?」
「できるって...何をですか?」
「自分では何もできなかったんだろ
今ならできるんじゃねぇか?」
「...!」
日が暮れてきた
ずっと里の中を行ったり来たりして椿を探した
音がする方へ
身を隠しやすそうな方へ
草で何度も手を切った
何度も木の根につまづいた
[信じていれば見つかる]
そんなに世の中
話は上手くできていない
確かに炭治郎さんだって椿と一緒にすごしてた
確かに私だって椿が生きていると信じたかった
でも一度受け入れたものを
また理想として描けるほど
私の心はまだ強くない