第11章 弓を引き 雫を穿つ
「あの時透殿...さっき泡吹いてましたけど本当に起きて大丈夫なんですか?」
「大丈夫だ ねぇ炭治郎がいる所までの近道教えてくれない?」
無一郎が水獄鉢にいた時
小鉄が彼を助けようとした際に鬼に腹を刺されていたが
炭治郎から預かっていた
煉獄 杏寿郎の鍔のおかげで無事だった
しかし紫娜は未だに目を覚ましていない
(僕と紫娜が最初に会った時とは全く様子が違った)
「紫娜は鉄穴森さんが支えててあげて」
そう言うやいなや
無一郎はどんなに玉壺に攻撃されても決して集中力を欠かさず刀を研いでいた鋼鐵塚に話しかける
「ねぇ それ 炭治郎の刀なんだろう
早く炭治郎の所に行かなきゃ行けないんだけど」
「...」
「ねぇ 聞いてる?だから炭治郎のところ行くから刀貸してくんないかな」
「...」
さすがに集中しているからといって
ここまで無視されるといくら人に興味を示さない無一郎でも腹が立つ
先程の鬼からの攻撃のせいだろうか
刀鍛冶では珍しく
面はなく素顔が見え
片目は潰れている
「時透殿 脇です 脇を狙うのですよ!」
後ろから近づき、刀を研ぐために張った肘の下に手を入れる
「ひゃ ひゃ ひゃ ひゃ!」
「刀貰うよ」
急に走り出した時透を急いで追いかける
鉄穴森は紫娜をおぶり、そんな鉄穴森を小鉄が支えながら走る
が
恐ろしいことに
脇をくすぐられ、しばらくは起きないであろうと思っていた鋼鐵塚が起き
まだ研ぎ途中の刀を取られたこと気づいたのか
恐ろしい形相で四人の後を追うのだった