第11章 弓を引き 雫を穿つ
いつからこんなお節介になったんだろう
あの子ぐらいの子
何人も喰ってきたのに
足が動いてくれない
僕にいる何かが
追いかけている鬼を殺せという
面倒くさい
______ザシュッ
体が勝手に動いていた
鬼を倒そうと思った瞬間に
体を縛っていた縄が
解けたように
僕に気づいたその子は
鬼から追いかけられる恐怖から
僕という新しい恐怖で表情が凍ってる
「お兄さんも...鬼?」
「...」
「椿も鬼みたい」
よくわからない
本当のことを喋っているのかいないのか
目の前に子供がいるのに
食欲すら湧かない
鬼だから?
だから人の気配がしなかったのか
だから僕を怖がらないのか
"椿"
僕の好きな花
偶然だよね
鬼を斬った
人を庇うため
これが何を示しているのか
この行動が全ての計画を狂わせるかもしれない
最悪だ
でもこの子を守ろうとする自分がいて
そんな自分の存在がいた事に驚いて
興味本位だけど助けてみようと思って
初対面でしかも言っていることが信じられないただの餓鬼
自分が憎たらしい
「僕が怖いか」
「今まで見た鬼の中で一番怖い」
「家族はいないのか」
「血の繋がった人はいない」
震えている
でもそんな中で僕と話せるぐらい鬼には慣れているようだ
こんなにも怯えているのに
僕は何を考えているんだろう
「もうすぐ夜明けだ
...一緒に来るか?」