第11章 弓を引き 雫を穿つ
______その頃
深く悠大から斬られたせいで
なかなか上手く腹と下半身が繋がらない
悠大の刀に毒があった
分解するのには時間がかかったけど
あとはくっつけるだけ
周囲から感じていた鬼の気配はほぼなくなっている
玉壺さんが沢山鬼を引き連れてたけど
この里のダメージも鬼側のダメージも
大したことがないだろう
柱が二人と姉さんがいる時だったからタイミングが悪かった
多分上弦の鬼もそろそろ殺られるはずだ
鬼になってから爪が鋭くなった
感覚が優れるようになった
治癒力も上がった
自分が人間だった頃、
自分の何が駄目なのかよく痛感する
鬼になって良かった
鬼になって良かった?
よく分からない
なんでもいい
あと少しだけ生きられればいい
足を止めた
何かが聞こえる
鬼の気配が一つ
もう一つ気配がするけど
なんだろ
おかしい
人じゃない
「...か...けて...
誰か助けて!」
必死に逃げる...子供?
それを追うのは壺から出てきたような魚の鬼
おそらく玉壺さんが作ったものだろう
向かってくる子を見て体が固まる
そんな自分に驚いた
狼の面...
錦の子ならあの程度の鬼ならすぐに斬ってもおかしくない
なぜ面を
「助けて!」
時間が無い
夜明けはもうすぐだ
腹と下半身はもうくっついた
ただ足が動かない
もう三年がたった
大丈夫だと思ったのに