第11章 弓を引き 雫を穿つ
「くそオオオ!!あってはならぬことだ!!
人間の分際で、この玉壺様の頸をよくもォ!!
おぞましい下等生物めが、貴様ら百人の命より、私の方が価値がある、選ばれし、優れた生物なのだ!!」
「...」
「弱く!!生まれたらただ老いるだけの!!“つまらぬ、くだらぬ命”を、私がこの手!!神の手により高尚な作品に“してやったというのに”この下等な蛆虫共・・・」
「全てはそこにいる女のせいだ...女の殺気が...
そこにいる女だけでもこの手で殺してやる...!」
届くはずもない腕
意識も薄れてきた
原因はわかってる
だけどもう
動かない
時透様が鬼を細かく切り刻む
「もういいからさ、早く地獄に行ってくれないかな」
ほろりと崩れていく鬼の容姿
可哀想に
人の命の愛おしさも
儚さも
素晴らしさも
知らなかったんだ
命も一つの芸術だってみれなかったのかな
急に視界が傾く
良かった鬼を倒せて
体に鞭を打ち続けたら
こうなることぐらいわかってた
______ドッサ
おかしい
痛くない
恐る恐る目を開くと
時透様が
倒れる私を支えてくれた
「紫遊佐...」
これ以上喋れない
お礼がいいたい
炭治郎さんは...不死川さんは?
蜜璃さんだって
涙が溢れてくる
紫遊佐じゃない
紫遊佐じゃない
「紫遊佐って誰のこと見ていってんの?
紫娜 聞こえてる? 喋れないの?なんで泣いてるんだろう」
紫遊佐じゃない
紫遊佐じゃない
五歳の時に誓ったのに
母上と紫遊佐は私が守るって
二人とも
どうして私を置いていってしまったの?