第11章 弓を引き 雫を穿つ
「本当に大丈夫ですか錦殿」
小さく頷いてみせる
笑顔で頷ければ良かったけど
人を安心させるほど
自分に猶予がない
ごめんなさい
心配してくれてるのに
私は今、話せない
情けないけど
必ず鬼は倒しますから
見てて____
..........................
「なんだ 女 お前は後で相手してやる」
一体いつまで話してんの?
「うーん、うーん」
「ヒョヒョッ、何だ?」
「気になっちゃって・・・なんかその壺、歪んでない?
左右対称に見えないよ下っ手くそだなぁ」
大きく開いた目
あぁ、時透様がつついた水風船が弾けて破れたようだ
時透様の言葉が怖い
それ以前に
やっと目を確認できたからわかったけど
この鬼上弦の伍なんだ
「それは貴様の目玉が腐っているからだろうがァァァァァア!!!」
なんだろう
前も見たような形なんだよなぁ
「私の壺のオオオ、どこが歪んでるんだアアア!!!」
あれだ!
那田蜘蛛山で蜘蛛にされかかった方たちに似てるのか
顔と短い手足
さっきから時透様はずっとそれを挑発してたんだ
──血鬼術 一万滑空粘魚
また壺か
十個の壺からはビチビチと跳ねる魚が
何千匹も出てきている
「一万匹の刺客が、お前を骨まで喰い尽くす!!
私の作品の一部にしてやろ!!!」
「霞の呼吸 陸ノ型 月の霞消」
魚を全て斬り落とす時透様
今のままじゃ足でまといになるだけ
魚は粘液性だからきっと毒だ
この鬼の性格から見て多分呼吸以外からも皮膚から吸収できるような毒
____夜の呼吸 壱ノ型 満月
魚が出てくる壺を全て斬る
これなら被害に合う範囲も減るはず
「霞の呼吸 参ノ型 霞散の飛沫」