第11章 弓を引き 雫を穿つ
何週間かたった
父上が鬼狩りに行く
兄さんはわからない
ちょこっと晴れて
母上と私と紫遊佐で
家の裏に小山を作った
その上に大きな石を置いて
なんて書いてあるか分からないけど
文字を掘っていた______[紫乃]
「母上 なんて書いてるのですか?」
ここしばらく母上はずっと泣いていた
「あなたの妹になるはずだった子の名です」
なんで石に書いたのか
なんでそれを小山の上に置いたのか
私にはわからなかった
夜
父上が仕事へ行き
兄さんも一緒に行くようになった
家が静か
父上がいなければ
家で安心していられる
「ねーさん ははうえ が 泣いてるのはなぜ?」
「母上は悲しんでおられます」
私も
分からない
「母上を守るために
強くならなくてはいけません」
「ぼくは ははうえと ねーさん 守ります」
いつかきっと
私は母上と紫遊佐を...
____________
目を覚ました
未だに夜 朝は来てない
何を見てたんだろ
走馬灯?
ずっと前の記憶
忘れていた
妹を流産して亡くしたんだ
確かその頃から母上は体を壊していた
もう疲れた
鬼は!?
前方を見るとまだ時透様と鬼が何やら話してる
私たちから少し遠ざけてくれた
そうだ
あの人は紫遊佐じゃない
髪の色も話し方も
瞳が伝えてくれる感情も全く違う
紫遊佐は家族を殺していない
私は家族を殺していない
私は鬼を...
悪鬼を倒す
私が気絶していた時間はものの数秒だったはず
まだ肺は使える