第11章 弓を引き 雫を穿つ
まだ余裕はある
拳を握る
まだ平気
ちゃんと
やり遂げなきゃ
「霞の呼吸、伍ノ型─霞雲の海」
──ザッ
紫遊佐が戦ってる
大丈夫
戦える
「素早いみじん切りだが、壺の高速移動にはついて来れないようだな」
「そうかな?」
「何?」
"夜の呼吸 捌ノ型 闇崩し"
「随分、感覚が鈍いみたいだね。
何百年も生きてるからだよ」
掠った
まだ刀の軽さと体がしっかり馴染んでない
でも
頸を掠めたおかげで鬼は少し血を流している
(くたばったはずじゃないのか!?
柱じゃないと言ってはいたが...なぜ強い!)
宇髄さんや蜜璃さんに比べたら紫遊佐も遅い
けど体の動きがしなやかで
その分 技の重みが大きい
いつから紫遊佐はそんなことができるようになったんだろ
「次は斬るからな。お前のくだらない壺遊びに、いつまでも付き合ってられないし」
「・・・・・・舐めるなよ、餓鬼が...」
何かが聞こえる
言ってるにはわかるのに
聞こえない
苦しい
「大丈夫ですか?」
誰だっけ...?
そうださっき時透様の刃こぼれした刀の代わりに
新しい刀を持ってきていた方だ...
良かった無事だった
声が出ない
情けない
本当に情けない