第11章 弓を引き 雫を穿つ
小話5__下____
「深く刺したはずだったんですがここまで来られるのは予想外でした」
「某を...覚えているのか...紫遊佐...!」
東も西も合わせて一番強かった悠大を
簡単に倒させてはくれまい
呼吸で止血ができたとしても大きな致命傷にはなるはず
技術では勝てない
正確には技術でも
錦を出てから自分なりに磨いた技も
きっと叶わない
「何故某を殺さない」
「それはあなたも同じだ」
こうなることがわかっていた
もう一回ぐらい刺しておけばよかった
「なぜ鬼になった!」
「あなたには関係ないです」
本当に怪我人なのか
それにしては身軽な乗りこなし
あぁ これだから僕は父上にも見捨てられてたのか
「僕はここで死ねない」
「某ここでお主を斬る」
だから嫌なんだこの人は
「夜の呼吸 陸ノ型 曙」
「血鬼術 三笠の山に いでし月かも」
悠大さんに斬られた痕を治すのに随分時間がかかった
呼吸で無理やり止血したんだろう
呼吸の技を繰り出したせいで傷口が大きく開いている
もうこの人に意識はない
肩を担ぎ人に見つけて貰いやすそうな場所まで引きずった
━━━━ドサッ
血肉の匂いが漂う
玉壺さんは何人の鬼を連れてきたんだろう
人にすらなりきれない僕が
鬼になりきれるわけが無いんだ